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空に光はなく、私が願う望みも無い。
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2024.11.23 02:45
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無題。
2007.12.13 23:07
「……天空を満たす光、一条に集いて 神の裁きとなれ」
少年は杖を翳し、短く詠唱した。
天を裂き迸る閃光。光が視界を覆い尽くした後、遅れて音が轟き空気が揺れる。
伽羅色の髪が風に揺れ、白い法衣が翻った。
次瞬には光は収まり、後には黒く焼け焦げた大地が広がる。
少年は息を吐いた。
「……少しくらい戦ってくださってもいいんじゃないですか?」
「うるせぇよ。ちゃんと手伝ってやっただろうが」
少年は肩越しに後ろを見やると、岩に腰掛ける男に言った。
男はさも面倒臭そうな声音で返す。
男の手が脇に抱えた竪琴を掠め、ぽろんと意味を成さない音が奏でられる。
詩人の装備をした男は、しかし詩人というにはほど遠い鋭い瞳で少年を見据えた。
「ちゃんと速さも魔力も上げてやっただろうが。そこまで膳立てされときながら一人で戦えないだなんてぬかすほど、軟な鍛え方した覚えはねぇよ」
「そりゃ、そうですけどね」
傲岸不遜名男の台詞に、少年は小さく息を吐いた。
どうやらこれ以上言っても無駄なようだ。
「で、これ。どうしますか?」
少年は再び前に視線を戻した。
視界いっぱいの焼け野原。所々に転がる、炭の塊、もとい焼死体。まあ、言ってしまえば元人間。
「ほっとけ。お前が呼んだ雲がそのうち流すだろ」
見上げれば、呪文に呼び寄せられた雨雲が、今にも泣き出しそうなほど暗く空を覆っていた。
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