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『頼むから黙って、ただ愛させてくれ』

by John Donne
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空に光はなく、私が願う望みも無い。
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Intoroduction. 2007.12.14 23:40
「ちょっとすいません、そこの人」
 ちょうど右斜め後ろ辺りから声をかけられたような気がして、青年は若干歩調を緩めた。年頃は17,8。精悍な顔立ちをした青年。体の動きを妨げない最低限の装備は格闘家のそれだ。
 数歩歩いて立ち止まると、青年は後ろを振り返った。辺りには様々な服装をした人間が入り乱れる。ここ戦士斡旋所では、傭兵としての仕事を探す者や徒党を組んで酒場の仕事を探そうとする冒険者達が数多く集まっていた。
「そうそう、格闘家とおぼしきそこのあなたです」
 先程と同じ声が聞こえたので、青年は的確に声の主の方へと視線を向けた。
 柔らかな面立ちの青年が彼の元へと歩みよってくるところだった。年の頃は恐らく彼と同じくらい。彼の固い紺青の髪とはまるで違う、細い伽羅色の髪がさらりと揺れる。所謂優男、といった容貌の青年だ。身に纏っているのが白い法衣であるのを見ると、青年が白魔道士であろうことがわかる。
 格闘家の青年の目の前にまで歩み寄ると、白魔道士はにこりと人好きのする笑みを浮かべた。
「突然ですが、魔道士と組んでみる気はありませんか?」
 台詞と同じく突然だった。

***

 無茶苦茶な戦いをする。
 白魔道士の青年――ハルと旅をするようになって彼、ツヴァイが最初に抱いた感想はそれだった。
 戦闘の前に突然ラバーシューズを履けと言われ訝しみながらもそれに従うと、戦いが始まった途端、ハルはサンダガをぶちかました。白魔道士だとばかり思っていたので、まずとにかく驚いた。
 いや、白魔道士ではあったのだ。ただ、その傍らで彼がそれとは別の技能もまた身に着けていただけであって。
 ツヴァイは魔道のことには詳しくなかったのだが、様々な魔道士の術を魔力を使うこともなく、それも短い詠唱だけで使える、そんな技能があるらしい。ほとんど反則だと思うのだが、本人曰く色々と制約があって、それはそれで面倒なのだそうだ。詳しく聞いてもわかるとは思えなかったので、聞かなかったが。
 聞いたところハルは魔道士を専門にやっていたらしいのだが、それにしては好戦的なようにも思える。自身の魔法で、あるいはツヴァイの攻撃で瀕死になった魔物がいれば、率先して杖で殴りに行くし。それも魔道士の割には強い。魔力を高める緑色の宝玉が嵌った杖で、殴るのだ。
 魔道士一筋の癖に、いつの間にかツヴァイの格闘家の技能である『カウンター』まで覚えてるし。ツヴァイもいくつか魔法を教えてもらったが、元々魔力はあまりないし、回復も攻撃も自身の能力の方が使いでがいい。
 とにかく無茶苦茶なやつだった。ハルという青年は。
 こいつと関わって、後々更に無茶苦茶な戦いに巻き込まれることを、ツヴァイはまだ知る由もなかった。
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