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ぼくがしんでしまったら
どうかぼくのからだをもやしてしまわないでくれ
もやしてしまったら
もうぼくのひとみをみることができなくなるだろう?
ぼくがしんでしまったら
どうかぼくのからだをうめてしまわないでくれ
うめてしまったら
もうぼくのやすらかなしにがおをみることもできなくなるだろう?
ぼくがしんでしまったら
どうかぼくのからだをきみのそばにおいてくれ
くさりおちるそのしゅんかんまで
きみのたいおんをかんじていたいから
ほねまであいして
父親と、母親と、その間に立つ子供。
仲睦まじく手を繋いで歩く姿が、とても羨ましくて。
思わず去っていく後姿を、じっと見つめてしまった。
「どうした?」
更に後ろから声をかけられて、はっと振り向いた。
年齢以上に大人びた顔立ちをした少年が、少女を青い瞳でじっと見ていた。
少年の瞳よりも深い色合いのそれで見つめ返した後、少女は何でもないと首を横に振った。
少女は聡明だったのだ。不可能な事を言っても、彼を困らせるだけだとわかるくらいに。
その様子に少年は表情を変えずに『そうか』と返した。言葉とほぼ同じくらいに、彼の体が動く。
「ひゃ……」
無駄なく鍛えられた腕が、ひょいと少女を抱え上げた。
一瞬重くないだろうか、と少女は考えたが、少年は変わらず無表情だ。
『帰るぞ』と短く言われたので、『うん』と小さく返した。
『ありがとう』とほんの小さな声で呟いた少女に、少年は何も返さなかった。
ただ、少女を抱えた腕に少し力を入れた。
「何って、算術のサンダガですが」
「算術のサンダガですが、じゃない! 死ぬかと思っただろうが!!」
「ちゃんとラバーシューズは履いていたんでしょう? なら大丈夫じゃないですか」
「大丈夫じゃないですか、じゃないって言ってるんだ! ああいうことするなら、戦闘の前にちゃんと作戦として説明しとけ!」
「面倒じゃないですか。こちらはダメージを受けませんし、戦闘は手っ取り早く終わりますし、一石二鳥ですよ。問題ありません」
「だから……! ……もういい。次からは使う前にちゃんと言えよ」
「…………まあ、善処します」
(こいつ本当にわかってるんだろうな!?)
結局二、三度と同じ会話をして、無駄なのだと悟ることになる。
僕の世界はここにはない
剣に唄を
死者に祈りを